緊張しすぎて震える人の心理的対策
人前での発表や面接、大事な場面になると手や声が震える。このような「過度の緊張」に悩む方は少なくありません。単なる緊張ではなく、震えや動悸、声の震えといった身体症状が強く出るタイプは、心理的アプローチとあわせて適切な対策をとることが有効です。
この記事では、薬剤師の立場から心理的な対処法と、必要に応じた薬の活用について、わかりやすく整理します。
なぜ緊張すると震えるの?
緊張による震えの背景には、自律神経(交感神経)の過剰な興奮があります。危険を察知すると、体は「戦う・逃げる」モードになり、アドレナリンが大量に放出されます。
- 心拍数・血圧が上昇
- 手足の筋肉が緊張
- 微細な震え(本態性振戦の一種)が起こる
- 声帯の震えによる声の震え
こうした反応は本来正常な生理反応ですが、重要な場面では目立ちやすく、自信をさらに失う悪循環に陥ることがあります。
心理的な対処法
震えを完全になくすことは難しいですが、心理的アプローチによって自律神経の過剰興奮を抑えることは可能です。
1. 呼吸法(腹式呼吸)
- 鼻から4秒吸って、お腹を膨らませる
- 口から6〜8秒かけてゆっくり吐く
- 心拍数を下げ、副交感神経を優位にする
2. 「震えを抑えよう」としない
震えを抑えようと意識するほど、自律神経が過敏になり震えが増強することがあります。「震えてもいい」と許容することで逆に落ち着くケースもあります。
3. イメージトレーニング・場数を踏む
本番環境をシミュレーションして何度も練習することで、「脳が慣れる」ことが重要です。プレゼン・発表・面接のロールプレイも効果的です。
4. 体を温める
手の震えは末梢の冷えでも悪化します。冬場や冷房下では手先を温めておくと症状が軽減されることがあります。
それでも震えが強い場合に有効な薬の選択肢
心理的対策をしても身体的な震えや動悸が強い場合、一時的に薬を使用する方法があります。代表的なのがβ遮断薬(βブロッカー)です。
β遮断薬(インデラル)の特徴
項目 | 内容 |
---|---|
一般名 | プロプラノロール |
商品名 | インデラル |
作用 | 交感神経の興奮(心拍数上昇、震え)を抑える |
効果発現 | 服用後30〜60分程度 |
持続時間 | 3〜5時間程度 |
適応 | 本態性振戦、不安による震え、動悸の抑制 |
インデラルは心臓のβ受容体をブロックすることで、震えや心拍数の上昇を抑えます。脳には作用しないため、心理的不安そのものを直接消すわけではありませんが、身体症状を軽減することで「落ち着いて話せる」状態をつくるサポートになります。
服用のタイミングと注意点
- 本番の30〜60分前に服用
- 血圧・脈拍を下げる作用があるため、低血圧の人は注意
- 心疾患・喘息がある人は事前に医師へ相談が必要
まとめ
緊張による震えは自律神経の自然な反応ですが、心理的対策を組み合わせることで軽減可能です。それでも震えが強い場合、β遮断薬(インデラル)を活用することで、安心して本番に臨むためのサポートが得られます。
某薬局の薬剤師です。