子どもと大人で違う？ADHD薬の効果比較

監修：医師・薬剤師監修

はじめに

ADHD（注意欠如・多動症）の治療では、症状を和らげて日常生活を送りやすくするために、薬物療法が用いられることがあります。代表的な薬として、中枢神経刺激薬（メチルフェニデートなど）や、非刺激薬（アトモキセチン、グアンファシンなど）がありますが、実は「子ども」と「大人」では効き方や感じ方が少し違うことが知られています。

本記事では、一般的な医学情報にもとづき、子どもと大人におけるADHD薬の効果の違い、使用体験談、副作用の出方の傾向をわかりやすく比較します。

ADHD薬の代表的な種類

ADHD治療に使われる主な薬は、次の2グループに分けられます。

• 中枢神経刺激薬：コンサータ（メチルフェニデート徐放剤）など。脳の働きを活性化し、集中力を高める。
• 非刺激薬：ストラテラ（アトモキセチン）、インチュニブ（グアンファシン）など。興奮させるのではなく、注意や感情コントロールを安定させるタイプ。

どちらも「症状を軽くして生活を送りやすくする」薬であり、病気そのものを完治させるものではありません。

子どものADHD薬の特徴

● 効果の出方

子どもの場合、集中力や多動・衝動性に対する薬の効果が比較的わかりやすく出ることが多いと言われています。

• 授業中に席を立つ回数が減る
• 宿題に取り組む時間が長くなる
• 指示を最後まで聞けるようになる

学校の先生や保護者が「明らかに変わった」と感じるケースも少なくありません。

● 体験談：小学生のケース

小学生の男児Aくんは、授業中に立ち歩きが多く、宿題もほとんど手につかない状態でした。
非刺激薬を服用し始めて数週間で、

• 授業中に先生の話を聞きやすくなった
• 宿題に親と一緒に取り組めるようになった
• 友達とのトラブルが減った

といった変化が見られました。保護者は「性格が変わるのではなく、本来の『がんばりたい気持ち』が表に出てきたように感じた」と話しています。

● 子どもに多い副作用の傾向

• 食欲低下（給食の食べ残しが増えるなど）
• 入眠しづらい・寝付きが悪くなる
• お腹の不調（吐き気・腹痛など）

多くは数週間で慣れてきますが、成長期のため身長・体重の推移を定期的にチェックすることが重要とされています。

大人のADHD薬の特徴

● 効果の出方

大人の場合、仕事・家事・対人関係など複雑な場面が多く、薬の効果も「わかりやすい変化」よりも、次のような“質の変化”として感じられることが多いです。

• 締め切り前のパニックが減る
• メールやタスクの優先順位付けがしやすくなる
• 会議中に話を最後まで追いやすくなる

● 体験談：30代会社員のケース

30代の会社員Bさんは、仕事の締め切りを忘れてしまったり、会議中に話について行けなくなったりすることが悩みでした。
非刺激薬のストラテラを使用し始めると、

• タスク管理アプリを継続して使えるようになった
• 会議中のメモが整理しやすくなった
• ミスが減り、周囲からの信頼が回復してきた

といった変化を感じたといいます。一方で「完全に別人になるわけではなく“やろうとしていたことが、ようやく実行できる感覚”」に近いと表現しています。

● 大人に多い副作用の傾向

• 吐き気・食欲低下
• 眠気、または逆に寝付きにくさ
• 動悸・血圧の変動（刺激薬使用時）

仕事や運転があるため、副作用が生活に影響しないかを慎重に確認しながら調整していく必要があります。

子どもと大人の「効果の違い」を比較

● 共通点

• 集中しやすくなることで、勉強・仕事のパフォーマンスが上がる
• 衝動性が和らぎ、人間関係のトラブルが減りやすい
• 「できない自分」から「工夫すればできる自分」への転換が起こりやすい

● 違いのポイント

• 子ども：行動（落ち着き・宿題・授業態度）の変化として周囲も気づきやすい
• 大人：タスク処理や仕事の質、ミスの減少など“内面的・機能的な変化”として感じることが多い
• 大人はストレス・睡眠不足・飲酒など生活要因の影響が強く、薬だけではカバーしきれない部分もある

子どもと大人で異なる「治療のゴール」

医師は、ADHD治療におけるゴール設定が年齢で異なる点も重要だと指摘します。

• 子ども：学習環境や友人関係を整え、自己肯定感を守ること
• 大人：仕事・家事・対人関係のストレスを減らし、生活全体を安定させること

どちらの場合も、薬だけに頼るのではなく、生活リズムの見直し・環境調整・周囲の理解が欠かせません。

副作用レビューと注意点

ADHD薬はいずれも医師の管理下で安全に使えば有効性が高い薬ですが、完全に副作用がないわけではありません。

• 食欲低下・体重減少
• 眠気または不眠
• 頭痛・腹痛・吐き気
• まれに気分の落ち込みやイライラ感

特に子どもでは成長への影響、大人では血圧や心疾患のリスクなどを考慮し、定期的な診察・体重や血圧チェックが重要です。気になる症状が出た場合は、自己判断で中止せず、必ず主治医に相談しましょう。

まとめ：子どもも大人も、“その人らしさ”を取り戻すための薬

ADHD薬は、子どもと大人で「見え方」や「ゴール」は違うものの、共通しているのはその人本来の力を発揮しやすくするサポート薬であるという点です。

子どもでは学習や友人関係を守るために、大人では仕事や生活の質を高めるために、適切に用いることで大きなメリットが期待できます。

本記事は一般的な医学情報と実際の体験談をもとに作成したものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。ADHDの診断や薬物治療については、必ず専門の医師・薬剤師に相談のうえ、個別の判断を受けてください。