アナボリックステロイド比較:オキシメトロンとダイアナボル
1. はじめに
オキシメトロン(商品名:アナドロール)とダイアナボル(メタンジエノン)は、最も広く知られている経口アナボリックステロイドの代表格です。両者とも1960年代に開発され、医療用途から始まりましたが、現在では主に筋量増加を目的として使用されています。
本比較研究では、薬理学的特性、効果の違い、副作用プロファイル、適切な使用方法について科学的な観点から詳細に分析します。これにより、使用者が十分な情報に基づいた判断を行えるよう支援することを目的としています。
2. オキシメトロン(アナドロール)の詳細
2.1 化学構造と特性
オキシメトロンは17α-アルキル化ステロイド(肝臓で分解されにくくするため17位に炭素基を付加した構造)で、化学式はC₂₁H₃₂O₃です。DHT(ジヒドロテストステロン)誘導体として分類され、極めて強力なアナボリック効果を持ちます。
2.2 薬理学的メカニズム
オキシメトロンはアンドロゲン受容体に結合し、タンパク質合成を劇的に促進します。特徴的なのは、エリスロポエチン産生の刺激により赤血球数を増加させ、酸素運搬能力を向上させることです。また、窒素保持能力が非常に高く、筋肉の異化を防ぎます。
2.3 期待される効果
- 急速な筋量増加:2-4週間で5-10kgの体重増加
- 筋力の劇的向上:主要リフトで20-30%の向上
- 赤血球数増加:持久力とリカバリーの改善
- 関節保護効果:滑液の増加による関節痛軽減
2.4 一般的な使用方法
推奨用量は1日25-100mg、使用期間は4-6週間が一般的です。肝毒性が高いため、長期使用は避けるべきです。
3. ダイアナボル(メタンジエノン)の詳細
3.1 化学構造と特性
メタンジエノンも17α-アルキル化ステロイドで、化学式はC₂₀H₂₈O₂です。テストステロン誘導体として分類され、アナボリック指数が100-150と高い値を示します。
3.2 薬理学的メカニズム
ダイアナボルはアンドロゲン受容体への結合に加え、アロマターゼ酵素により部分的にエストロゲンに変換されます。この特性により、タンパク質合成の促進と同時に、水分保持による筋量の増加をもたらします。
3.3 期待される効果
- バランスの取れた筋量増加:4-6週間で3-7kgの増加
- 筋力向上:主要リフトで15-25%の向上
- 筋肉の張りとパンプ:水分保持による筋肉の膨らみ
- 回復力向上:トレーニング頻度の増加が可能
3.4 一般的な使用方法
推奨用量は1日15-50mg、使用期間は4-6週間です。分割投与(1日2-3回)が推奨されます。
4. 直接比較表
| 項目 | オキシメトロン | ダイアナボル |
|---|---|---|
| アナボリック効果 | 極めて高い (320) | 高い (100-150) |
| アンドロゲン効果 | 中程度 (45) | 中程度 (40-60) |
| 肝毒性 | 非常に高い | 高い |
| エストロゲン変換 | なし | あり(中程度) |
| 水分保持 | 中程度 | 高い |
| 筋力増加 | 極めて高い | 高い |
| 推奨使用期間 | 4-6週間 | 4-6週間 |
| 一般的用量範囲 | 25-100mg/日 | 15-50mg/日 |
5. オキシメトロンのサイクル例
5.1 初心者向けサイクル1(単体使用)
| 週 | オキシメトロン | 肝臓保護剤 |
|---|---|---|
| 1-4 | 25mg/日 | シリマリン 200mg/日 |
| 5-6 | なし | シリマリン 200mg/日 |
5.2 初心者向けサイクル2(テストステロンベース)
| 週 | テストステロン | オキシメトロン | AI |
|---|---|---|---|
| 1-12 | 300mg/週 | – | アリミデックス 0.25mg 隔日 |
| 1-4 | 300mg/週 | 25mg/日 | アリミデックス 0.5mg/日 |
5.3 中級者向けサイクル1
| 週 | テストステロン | オキシメトロン | AI |
|---|---|---|---|
| 1-12 | 500mg/週 | – | アロマシン 12.5mg 隔日 |
| 1-6 | 500mg/週 | 50mg/日 | アロマシン 12.5mg/日 |
5.4 中級者向けサイクル2
| 週 | テストステロン | デカ | オキシメトロン |
|---|---|---|---|
| 1-12 | 400mg/週 | 300mg/週 | – |
| 1-4 | 400mg/週 | 300mg/週 | 50mg/日 |
5.5 上級者向けスタック
| 週 | テストステロン | トレン | オキシメトロン | AI |
|---|---|---|---|---|
| 1-12 | 600mg/週 | 400mg/週 | – | アロマシン 25mg/日 |
| 1-4 | 600mg/週 | 400mg/週 | 75mg/日 | アロマシン 25mg/日 |
6. ダイアナボルのサイクル例
6.1 初心者向けサイクル1(単体使用)
| 週 | ダイアナボル | 肝臓保護剤 |
|---|---|---|
| 1-4 | 20mg/日 | TUDCA 250mg/日 |
| 5-6 | なし | TUDCA 250mg/日 |
6.2 初心者向けサイクル2(テストステロンベース)
| 週 | テストステロン | ダイアナボル | AI |
|---|---|---|---|
| 1-12 | 350mg/週 | – | アリミデックス 0.5mg 隔日 |
| 1-4 | 350mg/週 | 20mg/日 | アリミデックス 0.5mg/日 |
6.3 中級者向けサイクル1
| 週 | テストステロン | ダイアナボル | AI |
|---|---|---|---|
| 1-12 | 500mg/週 | – | アロマシン 12.5mg/日 |
| 1-6 | 500mg/週 | 30mg/日 | アロマシン 25mg/日 |
6.4 中級者向けサイクル2
| 週 | テストステロン | EQ | ダイアナボル |
|---|---|---|---|
| 1-16 | 400mg/週 | 600mg/週 | – |
| 1-6 | 400mg/週 | 600mg/週 | 30mg/日 |
6.5 上級者向けスタック
| 週 | テストステロン | デカ | ダイアナボル | AI |
|---|---|---|---|---|
| 1-14 | 750mg/週 | 400mg/週 | – | アロマシン 25mg/日 |
| 1-6 | 750mg/週 | 400mg/週 | 40mg/日 | アロマシン 25mg/日 |
7. 副作用の詳細比較
7.1 肝臓への影響
オキシメトロン:極めて高い肝毒性。肝酵素(ALT、AST)の上昇率が高く、胆汁うっ滞のリスクも存在します。
ダイアナボル:高い肝毒性ですが、オキシメトロンよりは穏やか。それでも定期的な肝機能検査が必須です。
7.2 心血管系への影響
両者とも HDLコレステロールの低下とLDLコレステロールの上昇を引き起こします。オキシメトロンの方が脂質プロファイルへの影響が強い傾向があります。
7.3 副作用発現頻度比較表
| 副作用 | オキシメトロン | ダイアナボル |
|---|---|---|
| 肝酵素上昇 | 95% | 80% |
| 水分保持 | 60% | 85% |
| 血圧上昇 | 70% | 75% |
| 女性化乳房 | 10% | 40% |
| 脱毛 | 30% | 25% |
8. ケア剤の使い方
8.1 オキシメトロン使用時のケア剤
- 肝臓保護:TUDCA 500-1000mg/日、シリマリン 300-600mg/日
- 血圧管理:リシノプリル 10-20mg/日(必要時)
- 脂質改善:レッドイーストライス、フィッシュオイル
8.2 ダイアナボル使用時のケア剤
- アロマターゼ阻害:アリミデックス 0.5mg/日、アロマシン 12.5mg/日
- 肝臓保護:TUDCA 250-500mg/日
- 女性化乳房予防:ノルバデックス 10-20mg/日(予防的)
8.3 PCT(ポストサイクルセラピー)プロトコル
両者共通:
- クロミッド:50mg/日×4週間
- ノルバデックス:20mg/日×4週間
- HCG:2500IU×週2回×2週間(サイクル終了直後)
9. 実際のユーザーレビューと経験談
9.1 オキシメトロンのレビュー
「6週間で体重が12kg増加。ベンチプレスが30kg向上した。ただし、4週目から肝酵素が急上昇し、医師の指導で早期終了。効果は圧倒的だが、副作用も強烈。」
推奨度: 7/10
「過去最高の筋量増加を経験。食欲が異常に増進し、トレーニングの重量が面白いように伸びた。しかし、血圧が180/110まで上昇し、降圧剤が必要に。」
推奨度: 6/10
「25mg/日の低用量で使用。4週間で5kgの増加とパワーアップを実感。副作用は軽度の肝酵素上昇のみ。適切な用量管理が重要。」
推奨度: 8/10
9.2 ダイアナボルのレビュー
「6週間で7kgの体重増加。筋肉のパンプ感が素晴らしく、見た目の変化が顕著。水分保持はあるが、トレーニング効率が格段に向上した。」
推奨度: 9/10
「初回使用で20mg/日から開始。3週目で女性化乳房の兆候が出現したが、AIで管理可能。オキシメトロンより副作用が穏やか。」
推奨度: 8/10
「長年の愛用品。効果と副作用のバランスが良い。適切なケア剤使用で安全に使えている。初心者には最適な選択肢。」
推奨度: 9/10
10. 選択のガイドライン
10.1 目的別推奨
- 最大筋量増加: オキシメトロン
- バランス重視: ダイアナボル
- 筋力向上: オキシメトロン
- 見た目の改善: ダイアナボル
10.2 経験レベル別推奨
- 初心者: ダイアナボル(副作用が比較的穏やか)
- 中級者: 両方とも選択可能
- 上級者: 目的に応じて選択、スタック使用も可能
11. 血液検査とモニタリング
11.1 必要な検査項目
- 肝機能: ALT、AST、ビリルビン、ALP
- 脂質プロファイル: 総コレステロール、HDL、LDL、中性脂肪
- ホルモン: テストステロン、エストラジオール、LH、FSH
- その他: 血圧、血糖値、腎機能
11.2 検査のタイミング
- 使用前: ベースライン値の確立
- 使用中: 2週間ごと(肝機能は必須)
- 使用後: PCT完了1ヶ月後
12. 法的・倫理的考察
12.1 日本における法的位置づけ
日本では、アナボリックステロイドは医薬品医療機器等法の規制対象ですが、個人使用目的の輸入は可能です。ただし、販売・譲渡は違法行為となります。
12.2 スポーツでの使用禁止
WADA(世界アンチ・ドーピング機構)により、すべての競技スポーツで使用が禁止されています。アマチュアスポーツでも同様の規制が適用されます。
13. まとめと結論
オキシメトロンとダイアナボルは、それぞれ異なる特性を持つ強力なアナボリックステロイドです。オキシメトロンは最大限の筋量・筋力増加を求める上級者向け、ダイアナボルはバランスの取れた効果を求める初心者から中級者向けと言えるでしょう。
どちらを選択する場合も、必ず医師の監督下での使用、適切なケア剤の併用、定期的な血液検査によるモニタリングが不可欠です。短期的な効果の魅力に惑わされることなく、長期的な健康を最優先に考慮した判断が求められます。
14. 参考文献と情報源
- Kicman, A. T. (2008). Pharmacology of anabolic steroids. British Journal of Pharmacology, 154(3), 502-521.
- Hartgens, F., & Kuipers, H. (2004). Effects of androgenic-anabolic steroids in athletes. Sports Medicine, 34(8), 513-554.
- Bahrke, M. S., Yesalis, C. E., & Wright, J. E. (1996). Psychological and behavioural effects of endogenous testosterone and anabolic-androgenic steroids. Sports Medicine, 22(6), 367-390.
- 厚生労働省. (2023). 医薬品医療機器等法に関する規制について.
- WADA. (2023). World Anti-Doping Code: Prohibited List.
某薬局の薬剤師です。

